小説レビュー その他もろもろとか。

2014年3月の読書メーター
読んだ本の数:5冊
読んだページ数:1466ページ
ナイス数:324ナイス

きことわ (新潮文庫)きことわ (新潮文庫)感想
ぼんやりとして虚ろな追憶に時間の放つ彩りを交えた中篇。独特の雰囲気を少ない文字数で読み取らせる芥川賞的な小品で、美しく零れる言葉たちについ目が留まる。現実と俯瞰している感覚と、目に見えぬもう一人の存在と、夢が他の人とつながってゆく喩えなど、そのどれもが人が眠りにおちる瞬間に味わう極上のまどろみを描いているよう。貴子と永遠子との絡みあう髪を隠喩に縺れる記憶と夢とが妙にノスタルジックであり時の流れを感じ入ってしまう。人の持つ砂時計の大きさはそれぞれであり、同じ三分であっても流れる砂の早さは違うのかもしれない。
読了日:3月26日 著者:朝吹真理子


手紙 (文春文庫)手紙 (文春文庫)感想
殺人犯の身内として社会で生きてゆく覚悟を問う物語。主人公である直貴に同調する読者はやり切れぬ思いで担任の教師やエスニック店の店長、リサイクルの立野、音楽プロデューサー、中条の父、会社の同僚や平野社長を見つめるだろう。この物語は誰も間違ってはいない社会の現実なのだ。それだけに差別する罪悪感や諦めという重い剣が幾重にも自らに突き刺さり、正視することもままならない醜い自身と向き合うことになる。正々堂々とすることを自己満足と切り捨て素性を隠す罪過を世代を超えて背負ってゆく覚悟・・・差別のない社会は存在しないのだ。
読了日:3月20日 著者:東野圭吾


花の鎖 (文春文庫)花の鎖 (文春文庫)感想
花と月と雪の三つの物語を謎解く先に、赦しと希望の願いが込められているような作品。『告白』の湊かなえというイメージが先行していてどうにも毒々しい物語ではないかという先入観があったが、どうして情を揺さぶる物語も実に巧いのだ。時系列がわからないという読者のモヤモヤ感を弓がしなる限界まで引き、放たれてから明かされる個々の想いも二転三転するなど読みごたえがある。一読しただけでは全体像が掴みにくく読み返すことで気づく事実もあり、本の厚み以上に深さを感じてならない。時間をかけて人を赦すことの難しさと温かさを描いた秀作。
読了日:3月17日 著者:湊かなえ


球体の蛇 (角川文庫)球体の蛇 (角川文庫)感想
目に映る事実と心に抱える真実とは光と影でできている。『星の王子様』からの『ぞうをこなしているうわばみの絵』をモチーフに、主人公トモの青い経験が明かされてゆく。第一章サヨの描写が甘く、第三章田西も掴みどころがないためどこかモヤモヤ感は拭えないのだけれど、終盤の閉じてゆく様はすこぶる心地よい。90年代のワードを多数散りばめた時代感の演出は、本筋に対するスパイスの域を超えているようで食傷気味。”本当”に辿り着いた真実を飲み込む”うわばみ”というダークでミステリアスな群像劇は、限定した読者にとって極めて良作だと。
読了日:3月14日 著者:道尾秀介


ベリーショーツ 54のスマイル短編 (ほぼ日ブックス)ベリーショーツ 54のスマイル短編 (ほぼ日ブックス)感想
ほぼ日刊イトイ新聞の企画本。細々といろんな話があるなかチビちゃんのエピソードの印象が強くほとんど親バカモード全開な内容。ユーモラスな筆致は小説とは違いほどよい笑いを誘ってくる。こどもの感性はほんっと莫迦にできなくて、所謂『言いまつがい』など親としてはいつまでも忘れられない出来事なんだなーと。ウチでも『ヘリポクターとケンちゃんの石(ハリーポッターと賢者の石)』とかミラクル発言連発だったもんなー。書籍には挿絵のほかにもやたら長い栞やノボトケさんやら輝く歯とか様々な仕掛けがたっくさん。ティータイム本てとこかな。
読了日:3月3日 著者:よしもとばなな

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2014.04.06 / Top↑
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