小説レビュー その他もろもろとか。

2013年11月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:1163ページ
ナイス数:183ナイス

N・P (角川文庫)N・P (角川文庫)感想
たった四人だけの物語。少しだけ謎があり、父親と娘の禁忌であり、死の影がちらつき、それであってもさらっとした表現でその情景ひとつひとつが美しく切り取られてゆく。ひと夏の出来事は偶然ではなく、風美と萃と、乙彦と咲が越えなくてはならない必然であり、それは『N.P』の100話目に相当するのだろう。物語の揺れる後半、物語の呪いに連れて行かれそうになる死の息づかいが耳元で聞こえてくる。狂おしい愛情の先には破滅しか訪れないのだろうか?物語は秋に続く未来を予感させるけれども、子に継がれる未来はきっと美しくそして毒々しい。
読了日:11月28日 著者:吉本ばなな

なつのひかり (集英社文庫)なつのひかり (集英社文庫)感想
くるくると夢の映像が切り替わるように、現実との境目がないまま次々と不思議な時間が経過してゆくファンタジー。アクの強い作品で、その世界観についていけない読者は多数いるだろう。繰り返し幻影を魅せられ、何を目的として彷徨うのかもわからず、ただひたすらに美しい情景を追いかける様がきっと夏の日差しを浴びたまぶしさなのだろうと理解する。シュールレアリスムを文章化して繋ぎ合わせたうつろ日の季節は、どこかうたた寝の感覚で、栞の思考が過去と現在を行き来するのっぺりとした流れに、ついまどろんでしまう。目を瞑りながら読みたい。
読了日:11月25日 著者:江國香織

月と蟹 (文春文庫)月と蟹 (文春文庫)感想
小学生の目線を通して語られるエゴイスティックな切なさを滲ませた物語。主人公である慎一と春也、そして鳴海。それぞれの拙い想いが錯綜し、淡い気持ちと苛立ちとが、いつしか幼い心を支配して引き金に指を掛けることに。男の子は単純で思慮が浅く、それでいて純粋で脆い。女の子は生まれながらにして女であり、その勘の鋭さは男の範疇を軽々と超えてくる。幼いながらも後に引けない男らしさのプライドが微笑ましく、ミステリアスな展開も相まって、残頁へ疾走するドキドキが止まらない。ひと夏が過ぎ去る群像は、子供たちに勇気を与えただろうか。
読了日:11月11日 著者:道尾秀介

無銭優雅 (幻冬舎文庫)無銭優雅 (幻冬舎文庫)感想
無垢な恋愛にいそしむ大人げない二人の物語。お互いの依存が共存してゆく歯車を、しっかり噛み合わさる偶然と必然とで、重ねてきた年月とは関係なく人の好きは成就するのだなと思わされる。40歳を過ぎてからの恋であったとしても、それは紛れもない純愛であって、二人だけの恋の流儀とは、どんなに痴態をさらけだそうともこの年齢だけに許される特権なのである。死を感じさせる小説が要所で挿入される演出。きっと意味が分かればさらに感じることができるのだろうけど、そこかしこに散りばめられた言葉の美しさだけでもドキッとする。恋は常備薬。
読了日:11月4日 著者:山田詠美


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2013.12.07 / Top↑
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