小説レビュー その他もろもろとか。

2013年8月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:4084ページ
ナイス数:239ナイス

さまよう刃 (角川文庫)さまよう刃 (角川文庫)感想
著者渾身の一冊であろう完全に突き抜けている秀作。まだ15才のひとり娘を誘拐陵辱し、川に遺棄する加害者への憎悪は読みながら手が震えるほど。理性の箍が外れる・・・いや、正常な判断力をもってしても、未成年の加害者を守る法律に背き復讐に走り出す父親を咎めることができない。法は被害者を守ることはなく、もはや絵空事の道徳観のみである。一度生じた悪は被害者たちの中に残り、永久に心を蝕み続けるしかないのだ。警察はその加害者を守り抜く法律のために、被害者家族の心を踏み躙ってもよいのか?市民ではなく法律を守る事が使命なのか?
読了日:8月31日 著者:東野圭吾
流星の絆 (講談社文庫)流星の絆 (講談社文庫)感想
世間を見返すため悪事に手を染める三兄妹・・・その三人の前に偶然にも14年前の両親惨殺犯と思しき人物が現れるのだ。東野さんらしい筆致で、犯人の核心に迫るまでが実によく描かれている。惜しむらくは、ある意味大団円な結末を予感させるところだろうか。すべて報われない、あるいは救われない振り切った物語であっても著者であれば極上のドラマが描けるはずなのに、この小説に限っては『絆』がテーマなので優しく慈しむような、そんな読後感の演出なのだろう。絆が安易に持て囃される昨今、この兄妹に幸あれと流れる星に祈らずにはいられない。
読了日:8月31日 著者:東野圭吾
さまよう刃 (角川文庫)さまよう刃 (角川文庫)感想
著者渾身の一冊であろう完全に突き抜けている秀作。まだ15才のひとり娘を誘拐陵辱し、川に遺棄する加害者への憎悪は読みながら手が震えるほど。理性の箍が外れる・・・いや、正常な判断力をもってしても、未成年の加害者を守る法律に背き復讐に走り出す父親を咎めることができない。法は被害者を守ることはなく、もはや絵空事の道徳観のみである。一度生じた悪は被害者たちの中に残り、永久に心を蝕み続けるしかないのだ。警察はその加害者を守り抜く法律のために、被害者家族の心を踏み躙ってもよいのか?市民ではなく法律を守る事が使命なのか?
読了日:8月31日 著者:東野圭吾
教室に雨は降らない (角川文庫)教室に雨は降らない (角川文庫)感想
モラトリアムに喘ぐ若者が、臨時の音楽教師として現代教育・・・とくにいじめを含む難題に直面しながらも、なんとか乗り越えようとする成長物語。ほのかに恋心を匂わせつつも主題は学級崩壊なのである。今の時代、授業はここまで崩壊しているのだろうか?初期のいじめは10日も我慢すればみんな飽きるからもう構わないで!という少女の叫びが実にリアルで寒い。また、生徒を迂闊に褒めてもいけないというくだり・・・つくづく教師という仕事の矛盾に同情を余儀なくされる。明日の雨は、明日にならなくちゃ降らないという一節にのみ救われるようだ。
読了日:8月30日 著者:伊岡瞬
短劇 (光文社文庫)短劇 (光文社文庫)感想
ブラックな面もチラチラと披露する短篇26作品。分類としてはショートショートになるのかな?散りばめられた言葉の中には光る一節もあるのだけれど、今の自分には物足りない。これを<切れ味>と云うのだろう。ブラックな物語であっても著者の人の好さが垣間見えて落としきれていないように感じられる。ひとつひとつは短い話なのに読了まで二ヶ月近くかかってしまったのはそういうこと。短劇というタイトルが秀逸なだけにもったいない。ただ著者の他作品である和菓子のアンは楽しく読めたため、すべてにがっかりすることはないのかも。長編に期待。
読了日:8月26日 著者:坂木司
書店ガール 2 最強のふたり (PHP文芸文庫)書店ガール 2 最強のふたり (PHP文芸文庫)感想
前作に引き続き、現場が大好きな書店員の奮闘が楽しめる一冊。どんな仕事でもその舞台裏は厳しいもの・・・そう、夢や憧れだけでは通用しない現実と、さらに女性ならではの大問題である妊娠出産、そして子育てと仕事の両立という難題にも触れている。周りの理解であったり、自分とご主人の覚悟などもうちょっと掘り下げて欲しい気持ちはあるけれど、あまり重いタッチで描かれた世界ではないので、これはこれでよいのかな。モノを売るのはやっぱり人が大事なんだなーと改めて感じるキラキラした毎日の演出は、自分の力で勝ち取らなくちゃダメなんだ!
読了日:8月25日 著者:碧野圭
オレたち花のバブル組 (文春文庫)オレたち花のバブル組 (文春文庫)感想
サラリーマンの悲哀を吹き飛ばす痛快活劇東京篇。国税との攻防や社内に潜む不穏な動きなど、次々と主人公半沢に襲い掛かる苦難・・・機転と運と、すべてを駆使して乗り切っていく姿は気持ちがよい。それにしても融資を受けるための経営計画書の稟議など、どうしてこうも机上論ばかりで物事進んでいくのだろうと疑問符が付く。銀行員の融資担当の方というのは本当に企業の経営に長けているのだろうか?国税の調査員も経営に関してどれだけの見識があるのだろう?何はともあれドラマと見比べて脚本、演出の妙をじっくり味わえるひとときを堪能したい。
読了日:8月19日 著者:池井戸潤
脳男 (講談社文庫)脳男 (講談社文庫)感想
サバン症候群の異形。突出した能力と感情が相容れない設定は興味深い。ただこの説明が非常に難解であり、要らぬエピソードも然り、物語の中盤まではかなり取っ付き難い話になっている。爆弾魔である人物の描写はもとより個々の人物描写も薄く、後半スピード感溢れる展開が面白かっただけに正直残念である。もっと大作になり得たであろうプロットが上手くまとまりきってないように思われる。最後、忽然と真梨子のもとに訪れ悲しげな表情を残し立ち去る鈴木・・・感情の欠片はまたしても波乱を予感させるが、自らが自らを裁く事にならないのだろうか。
読了日:8月12日 著者:首藤瓜於
ランドマーク (講談社文庫)ランドマーク (講談社文庫)感想
急激な都市化に歪が忍び寄る大宮という土地が舞台。登場人物たちの繰り返す日常は他人から見ればいたって普通・・・ただ、当の本人たちの心の内では少しずつ何かが狂いはじめている。誰にも気付かれない歪の世界に、登場人物たちは静かに蝕まれてゆくのだ。人の心に潜む狂気の巣窟がメタファーであるランドマークタワーO-miyaスパイラル・・・その構造上にある僅かな歪を俯瞰して捉えた最終章で、物語は一気に冷たさを増す。生きることの裏側に孤独という狂気はいつも潜んでいて、それは自分が考えているほど人は気付いてくれないものなのだ。
読了日:8月12日 著者:吉田修一
東京湾景 (新潮文庫)東京湾景 (新潮文庫)感想
愛すること、愛されることに不器用な男女の物語。東京で暮らす<勝ち組>の女性美緒と、目的のない肉体労働に日々を費やす亮介との心の揺れを描写した物語だが、主人公の二人の心の底に流るる静かな狂気を感じて薄ら寒い。人が人を愛することはシンプルであり、故に難しいことだと亮介は説く。愛は冷めると。本気で愛しても理由無く終わりが来ると思いながら、それでも愛し続けるという日常は狂気の沙汰なのかもしれない。品川埠頭からお台場まで泳ぐなど尋常でない。りんかい線という電車がキーワードであって、臨界を超えると捉えたのだが・・・。
読了日:8月8日 著者:吉田修一

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2013.09.07 / Top↑
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