小説レビュー その他もろもろとか。

2012年11月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1488ページ
ナイス数:99ナイス

ひとり日和ひとり日和感想
幾多の別れを経験する中で、主人公である知寿が新たなステージに踏み出すまでの燻った思いの時間を、独特のセンスとユーモアで描かれている作品。いわゆるモラトリアムとの決別といったところか。吟子さんの家に居候する緩やかな時間の中で、知寿と吟子さんの距離感に趣があり、それゆえ老婆である吟子さんの生き様が浮き立ってくる。年の功は馬鹿にできない。『世界に外も中もないのよ。この世はひとつしかないでしょ』ときっぱりと言い放つ吟子さんに目が覚めた読者は多かっただろう。退廃的な流れから先に見える光が電車からの景色とリンクする。
読了日:11月26日 著者:青山 七恵
窓の灯 (河出文庫 あ 17-1)窓の灯 (河出文庫 あ 17-1)感想
何か事件が起こる訳でもなく劇的な終幕に拍手喝さいという訳でもない。ただ『覗き見』という行為は人の本能によるところもあるのだろう・・・退廃的な雰囲気に何故か少しばかりの共感をおぼえてしまう。堕ちた時間の心地よい流れに身を任せるような物語で、そのちょっとした揺らぎを向かいの部屋の窓明かりに准えてるというところか。きっとこんな時間は長続きしないのだけれど、それでもこの物語の今は気だるく続き、深夜点けっ放しのTVのように遠い意識の中で偶然目が会えばゆっくり一礼してしまう・・・『その気になれば』が不思議と心に響く。
読了日:11月26日 著者:青山 七恵
優しい子よ (ポプラ文庫)優しい子よ (ポプラ文庫)感想
大崎善生さんの私小説。一人の少年との出会いと別れ、敬愛する老人との別れ、そして新しい命の誕生・・・。大崎さん本人の視点が興味深く、作家として、あるいはただの人間としての物事の捉え方が心に響く。死ぬ意味を考える、あるいは生きることを考えるという人間として普遍のテーマを言語化することで詰めていくという姿勢が『大崎BLUE』と呼ばれる喪失と再生を描く透明感溢れる物語を紡がせるのだろう。『憂い』という心配や懸念も『人』が支えることで『優しく』なれるのかと、人と人とのつながりには必ず意味があるのかと考えさせられる。
読了日:11月26日 著者:大崎 善生
スリープ (ハルキ文庫)スリープ (ハルキ文庫)感想
遺伝子組み換えやクローン技術は人の倫理を問う技術であり神の領域であろう。行き過ぎた科学・・・冷凍睡眠から三十年後に蘇生されるという近未来的SF作品であり、最終章も残り数頁まで緊張感を持続させる筆致に舌を巻いてしまう。プロットの時点で相当の完成度だと思われる構成力は特筆もので、何度も読者を騙しては少しばかりの涙を誘い、読後振り返れば現実の危うさに震撼すら覚えるのだ。三十年経っても車は空を飛ばないだろうけど、新たなエネルギー技術によって人々の暮らしに変化は間違いなく訪れる。明日の朝目覚めた自分は自分だろうか。
読了日:11月20日 著者:乾 くるみ
ロコモーション (光文社文庫)ロコモーション (光文社文庫)感想
心の内に潜む描写がいちいちネチッこい。独特の節回しがさらに追い討ちをかけて読者を畳みこむ。そうそうこれこれ・・・言葉巧みに不可思議な日常を、アカリだけの世界観をこっそりひっそりほくそ笑む感覚。ローリン。誰もが自分の中に潜む狂気を持っていて、あり得ないながらどこかに共感を覚えてしまう・・・うっかりちゃっかり自由奔放と思われる人生も、掛け違えたボタンはやがて無理がきて弾け飛んでしまう。ローリン。罰と儀式が続く中、『スキ』という日が訪れるであろうその日まで読者の妄想は永遠に続くのだ。生温い風はときに衝撃を伴う。
読了日:11月13日 著者:朝倉 かすみ
幸せな嘘 (小学館文庫)幸せな嘘 (小学館文庫)感想
『あらしのよるに』で有名な著者ですが、やっぱり大人には少し物足りない内容。小学館文庫ということもあって、小学高学年から中学生くらいまでが対象なのかな?一昔前でいうトレンディドラマのような初めての恋物語のような・・・山Pと前田あっちゃんとかの競演がお似合いな印象を受ける。タイトルほどのインパクトはないけれど、何気ない毎日も、友人たちの会話すらも、その人にとっては生きたドラマなんだなと。毎日自分が主役であり脇役だと思えば、つまらない毎日も少しだけ色彩を帯びてみえてくる・・・そんなハッピーエンドラブストーリー。
読了日:11月5日 著者:きむら ゆういち

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2012.12.01 / Top↑
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