小説レビュー その他もろもろとか。

7月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:2308ページ
ナイス数:264ナイス

インビジブルレイン (光文社文庫)インビジブルレイン (光文社文庫)
姫川玲子シリーズもいよいよ第四弾。単独でこの一冊を選ぶと伝わない部分が多々感じられる。物語の内容は悪くないだけに、あっさり展開させすぎて残念な気がするのもそのせいか。映画化ということもあり次作に含みを持たせているのかも知れないけれど、サブキャラを活かしき切れていないように感じてしまう。底をみせていない葉山くんや特異キャラの井岡くん・・・とくに井岡くんはすごく可能性を秘めているはずなのに、ただの変態キャラに成り下がっていて残念で仕方ない。次回展開する新天地での姫川に期待して、今回は溜飲を下げることにしたい。
読了日:07月31日 著者:誉田哲也
ふちなしのかがみ (角川文庫)ふちなしのかがみ (角川文庫)
夏の季節ピッタリの短篇集。短篇ニ作品目の『ブランコをこぐ足』は秀逸。オートマティスムと憑依による心霊現象の境界線が不明確になり、現実と非現実を彷徨うホラーに摩り替わる恐怖は、幼少期に誰もが感じた不思議な感覚で共感を覚えた。そんなこちらの世界と鏡の向こう側の世界を揺らぐシュルレアリスムは表題作『ふちなしのかがみ』で頂点に達する。最終話では 今までの辻村作品に共通するノスタルジックな温かみを魅せてくれるが、全体を通して一読しただけではわかりづらい・・・それでいて深い味わいすら感じさせられる印象を強く受けた。
読了日:07月23日 著者:辻村 深月
鬼の跫音 (角川文庫)鬼の跫音 (角川文庫)
夏の昼下がりにちょっと涼しく感じさせてくれる不思議な六篇の物語。どの作品もファンタジックな怪しさとノスタルジックな恐怖が紡がれている。気になったのは『犭(ケモノ)』 五十頁足らず物語に人のなせる業の深さを椅子の脚に刻まれたメッセージに馳せるのだ。刑務所作業製品の椅子に彫られた受刑者の想いは自らを悔い改める黒塗りの過去であり、真相に辿り着くその先は罪過にまみれた時間だけが経過している・・・じわじわと鬼の跫音が近づくような、息遣いが耳元で聴こえるような恐怖を残り数行で魅せられ、思わず瞼をギュッと綴じてしまう。
読了日:07月19日 著者:道尾 秀介
ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)
軽いミステリー仕立のこのシリーズも3作目。また少し栞子さんの母親に近づいたようだ。各章ごとに古書(そうじゃないものもあったけど)を取り上げ謎を解く定番ストーリーも興味深くサクサクと読める。今回のテーマは『絆』なんだけど、栞子さんと母親の絆は深く、母親の血を引く自分の性分を自覚した上での推理は信頼する心が感じられる。それゆえ反発する心も描かれていて、まだまだこの物語先が長そうです。大輔くんから飲みに誘えるようになったことが隠れたヒット。妹の怪しい動きに期待がかかります。
読了日:07月17日 著者:三上 延
アントキノイノチ (幻冬舎文庫)アントキノイノチ (幻冬舎文庫)
信じる心を喪失した主人公が、遺品整理業という仕事を通じて生きる心を取り戻してゆく物語。生きていることだけで凄いこと・・・生きて様々なことを経験して、喜んで苦しんで、そうして人はやっと老人になれる。生きてゆくことはそれだけで大変なことであってそれゆえ生命とは尊いものなのだ。善良な人もどんな悪党も生命の重さは変わらない。ただ、生きてきた重みは人それぞれに違う。自らの尊厳を否定され、度重なる誹謗中傷に耐えられず、心は折れそうになる。それでも生きていて良かったと、あの時の生命は励ましてくれる・・・『元気ですかー』
読了日:07月17日 著者:さだ まさし
ヒトリシズカ (双葉文庫)ヒトリシズカ (双葉文庫)
復讐という邪悪な情念に駆られた女性の孤独を背景に、俗世間に隠れる狂気を嘲笑する。常に事件の背後に潜み、死をもって制裁を下す彼女を闇から掬うこと・・・孤高の深淵から救うことはできなかったのか。17年間にも及ぶ事件の解れた糸が影の主人公である静加を軸に結ばれていく様子は、全容解明を期待しつつ哀しい結末も予感させる。それでもどこかに光を探すならば、血を分けた者への愛情が垣間見れる終章にあろう。たとえ八歳の少女であっても大人の瞬間がある・・・男はいつまでも子供だけれど、女は生まれながらにして大人なのかもしれない。
読了日:07月12日 著者:誉田 哲也
清須会議清須会議
今風の語り口で展開する歴史絵巻!軽妙なタッチで描かれる戦国時代の最先端が笑いを誘いそれでいて心に残る趣がある。この清洲(清須)で行なわれた<本能寺の変>後の織田家後継者問題と領地再分配の話し合いは、壮絶な頭脳戦であり闘将柴田勝家と策士羽柴秀吉における事実上の一騎打ち・・・それが著者三谷幸喜の手に掛かれば、プラトニックラブや嫉妬の愛憎劇を盛り込み、情で揺れる武将の苦悩がモノローグとして語られる喜劇脚本として一本の映画になってしまうのだ。それにしても秀吉の頭脳と称される参謀黒田官兵衛は現代の政界にいて欲しい。
読了日:07月09日 著者:三谷 幸喜

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2012.08.08 / Top↑
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