小説レビュー その他もろもろとか。

結構ハマってますよ!伊坂さん。

この『アヒルと鴨のコインロッカー』は、第25回吉川英治文学新人賞を受賞した作品ですね。
<吉川英治文学新人賞>はいつもハズレがなくて(笑)直木賞とかたまにハズレるんだよねー・・・ワタシの中ではこの賞受賞した作品は安心してよめる指標になってますね。

多聞に洩れず、この物語も緻密な計算(時系列なども含めたプロットによる伏線の数々・・)によって格別の余韻を感じることができた。この著者はとにかく計算高い(笑)
作家さんの中には『書いてるうちにキャラクターが突っ走っていろいろ演出してくれる・・』な、<筆が赴くままに>という直感的な人と、すべてが計算づくで予定調和された感動を読者に演出する人がいると思う。
勿論計算づくであっても、読む読者にはその計算はわからないのでハラハラしてしまうのだ(絶対この人には騙されるもんか!って読んでるのにね)

で、この物語は二部構成・・・主人公は『椎名』という大学に入学が決まって東京から仙台に引っ越してきたばかりの人物と、引っ越した先で出会った『河崎』という人物。出会ったばかりだというのに河崎という男は<本屋強盗>の話をもちかける・・・なんでも広辞苑を奪いたいらしいのだ。
結局本屋強盗は成功するのだが、椎名は何か腑に落ちない。そして偶然にも巡りあったペットショップの店長『麗子』を軸にそのカラクリが解けていく。
同時進行で物語は二年前の出来事を進めていく。二年前『琴美』は『ドルジ』というブータンからの留学生と同棲していた。そしてある事件に巻き込まれてしまう。ペット連続虐殺事件だ。
麗子さんのペットショップでアルバイトをする琴美は、いなくなった店の柴犬をドルジと一緒に探していた。その途中、偶然目の前で車に轢かれてしまった猫を埋葬するため二人は立ち入り禁止の公園に足を踏み入れる。そこでペット虐殺犯と思われる三人組の男女に目をつけられてしまうのだ。
ドルジの活躍で何とか逃げ果せた二人だったけど、何かむしゃくしゃする気分を一新しようと琴美はバッティングセンターに向かう。そこで昔付き合っていた『河崎』と遭遇するのだ。




『わたしたちは帰るところだから、じゃあね』

わたしは長く彼と喋りたくなかったので早口に捲くし立て、ドルジの腕を引いた。
河崎はドルジに話しかける・・・

『琴美とは英語で会話をしてるんだっけ』

『ソウデスネ』

『そんなことだといつまで経っても日本語は上達しないぜ。琴美もわかってるだろ。日本語のイントネーションとか発音はさ、膨大な会話の中で覚えるしかないんだって。たいてい留学生ってのは聞く事ができても喋るのが下手なんだよな』

『日本語でそんなにペラペラ喋ったって聞き取れるわけないじゃない』

わたしはドルジをみた。案の定ドルジは首を捻っていた。

『そうやって遠慮してるから上達しないんだって』

『ソウデスネ』

『そういう曖昧な返事が舐められる原因になるんだよ』

すかさず河崎が指摘する。

『でもブータンはいいよな・・・』

と河崎は続ける。

『ブータン人は蝿も殺さないんだぜ。チベット仏教というのはそういうものなんだ。因果応報というか、善い事をすればいつか報われる。悪いことをすればいつか報いがある。・・・日本人は良いことの見返りをすぐに求めるけどブータン人は違うんだ。今じゃなくていいんだ。生まれ変わったときにそれが帰ってくるかもしれない。そう思ってる。輪廻転生を大きな意味で捉えているんだ。だからブータン人は優雅だよ。人生が長く楽しい』

『偉そうに』

私は茶々を入れる

『これくらいの日本語ならすぐ聞き取れるようになるって』

『河崎さん、面白ですね』

ドルジが拙い日本語で応えた。




ここ最近<糸井重里>さんの『ほぼ日』でブータンの話題が多く取り上げられていた。世界でもっとも幸せな国だという。経済的に物凄く発展しているわけではないけれど、国民がみな幸せに暮らしているのだそうだ。
ここでもそういう宗教観が少しだけだけど説明されている。
確かに一度は行って観たいですね・・・ブータン。

で、上記二つの物語(椎名と河崎の本屋強盗と、琴美、ドルジ、河崎のペット虐殺事件)とが、現在と二年前というふうにして同時進行し、やがて両方の時間軸に存在する河崎と麗子がきっかけとなって二つの物語が交錯していくのだ。

まさに圧巻!

圧倒的な筆力で、物語の初期から後半に繋がる伏線をばら撒いていき(勿論怪しいなと思いながらも物語りに没頭しているので、気になる叙述も頭の片隅に記憶してるに止めるが)その回収劇足るや、類稀なる爽快感すら感じさせてくれるのだ。
まー伏線も読者が記憶していなければ何にも役に立たないので(笑)その叙述自体も創意工夫があり印象付けるのが上手なのだと思う。

他の人の読者レビューを読むと<村上春樹>の模倣という人が多い。
確かに、少し退廃的な雰囲気とバックで流れるテーマ曲(この場合はボブ・ディラン)とを交えた群像劇なので似てるっちゃぁ似てるけど、だからどうなの(笑)キリが無いって!そんなこと言い出したらみんな何かの模倣なんだし、物語が面白けりゃそれでいーじゃないねー。

あーあとタイトルの秀逸さに感動しましたよ。『アヒルと鴨のコインロッカー』・・・うん、感動しましたとも。
このタイトル、かなり物語の終盤にならないと繋がらないんだけど、ワタシとしては、コインロッカーの<ロッカー>とボブ・ディランとか登場人物の生き様なんかも引っ掛けてるんじゃないかなーと思っちゃいますね。とにかく小賢しい(笑い)




本のキャッチコピーなら・・・

神を閉じ込めておけば、舐められることなんかないぜ!

主人公だと思った椎名が傍観者だったことが最大の驚きですね(笑)

アヒルと鴨のコインロッカー

アヒルと鴨のコインロッカー
関連記事
2011.08.08 / Top↑
Secret

TrackBackURL
→http://mityururu.blog136.fc2.com/tb.php/303-e069713f