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今回は『池袋ウエストゲートパークⅡ』です。
表題作『少年計数機』を含む四篇を収録。主人公マコトと池袋の危ない関係が魅力の一冊ですね。

一つ一つの事件が短篇仕立てで内容もスリリングでスピード感溢れる展開・・・もう一気に読めちゃう感じ。
時代は12~13年前の池袋で、若干古さを感じなくも無いけど(PHS多用)まだまだ十代の読者でも面白く読めると思いますよ。




ヒロキはベンチから見えるすべての人間を、右手で男、左手を女に分けてカチカチと計数機で数えまくっていた。
一重のちょっと吊ったおおきな目、丸くて小さな鼻、厚い花びらのような唇。ヒロキは超然と笑っていた。
誰かと繋がったり、誰かに笑いかける笑顔ではない。自分が世界とは関係ないということを証明する笑顔だ。
この世界や人間たちに何が起きても、自分の笑顔一つ傷つけることはできない。そう宣言しているようだ。
誰も足を踏み入れることのできない森の奥の湖の冬空を、一段と濃い青に映す水面のような澄んだ笑顔だった。

『なぁ、ヒロキはなんでいつも数を数えてんの』

『それはね、数がほんとうで、残りのものはみんな見せかけだから・・・なにもなくても生きられる人もいれば、生きていくのに数が必要な人もいる。世界を知るには世界を数えなくちゃいけないんだ。さっきマコトは公園を出るまでに僕より213歩少なく済んでいる。あの歩き方、教えて欲しいな』

ヒロキはLD(ラーニングディスアビリティ)知能に延滞がみられないのに学習障害があらわれる状態なのだ。

超然と俯瞰した笑みを浮かべるヒロキ。
そんな十歳を放ってはおけないだろ。それでおれは自分からやつのトラブルに巻き込まれていったのだ。




シリーズ②になってマコトに少しずつ変化が見て取れる。いくつかの事件を経て人間的な成長があったということなのかな?
それにしても魅力的な登場人物が多くて、まーそれが人気になる理由なんだろうけど・・・例えば<ゼロワン>という池袋に巣食う情報屋であったり、喜代治と鉄の元気ジジィやデザイナーの長谷部、娼婦のマドカなどなど、それぞれの個性がとびきり濃くて、もうそれだけで物語が色鮮やかに輝いてしまう。
なかでも『少年計数機』のヒロキはとびきりな個性だ。カチカチとひたすら数を数えて暮らす中で十歳とは思えぬ冷めた目で世の中を俯瞰する・・・こーゆう特別な孤独を描くのがすごくうまいですねー。孤独とは少し違うのだろうけど、そーゆう感覚って実は誰でも持っていて、読みながら密かに共感したりするんじゃないかなー。

最終話でマコトのダークな面が描写されていて、一部読者からは残念という感想があったりするけど、どこにもマコトが正義の味方だとは描かれていないんだからそれもありだとワタシは思っている。殺しに加担するというよりかは、あの空気感を感じるところに物語の妙があり、また続編でのマコトで明らかになっていくのでわ?と期待をしてたりしますよ。

誰もお前を強制することはできないさ。

今回のキャッチコピーは本文からの抜粋に近いけれど、マコトって孤独で寂しがり屋の自由人なんだなって・・・それが魅力なんだなー。

少年計数機

少年計数機
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2011.07.20 / Top↑
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