小説レビュー その他もろもろとか。

引き続き図書館戦争シリーズ・・・いよいよシリーズ最終巻。
図書隊と良化委員会が『革命』に向かって一歩を踏み出す物語なのだ。

冒頭の事件に息を呑んでしまった・・・原子力発電所のテロ攻撃事件だったからだ。
福井県敦賀原発の3号機4号機へ突入する戦闘ヘリの自爆テロ、それと同時に2号機の制御室を占拠しメルトダウンを誘発させるという手の込んだもので、津波というテロに屈した福島原発を思い身震いしてしまう。
著者は預言者?と思ったりもするけど、実は原発の不祥事は毎年のように繰り返されていて、マスコミや政府が大きく取り扱わず隠蔽し世間の注意をなるべく遠ざけていただけなので、人類の恐怖を狙った題材であればすんなり思いつく事件であっただろう。政府や国民自身の危機管理が不足していた事実を突きつけられたようで心が痛い。
震度6程度の地震に耐えられる原発など最初の原発開発から無かった(過去の地震においてすべて故障している)訳なので、政府が云う『想定外』なんて嘘ばっかりなのだ。『想定外』のことが起こることまで想定することが危機管理なのではないか?原発にテポドンが打ち込まれることや、隕石が落ちること、ゴジラに襲われることまで考えとけっちゅうんだ!!!!

と、熱くなってはいけない(笑)これは本の感想コーナーだからね。

で、この上記事件と酷似した小説を執筆した作家さんが、良化委員会に狩られるという大事件が今回のテーマである。小説が事件に加担する・・・あるいは要因になるという現実でも話題になる事象ですが、これなんかは『ライ麦畑でつかまえて』というJ・D・サリンジャーの小説を思いだす。野蛮な言葉や描写が散見するため社会影響を恐れ一部発禁処分があったほどの小説だけど、それ以上に、ジョン・レノン殺害犯や、レーガン大統領銃撃犯の愛読書として有名になり不買運動が起こったことのほうが著者を悩ませたのではないだろうか。
小説を読んだから犯行に及んだわけではないだろう。しかし個人の思想に影響を与えたと言われればそれも避けられない。だからといって小説を否定したり、作家さんに書くなと妨害したり、双方が正義をかざして主張する先になにがあるのだろう・・・

おぉっ、また脱線してしまったよ。

ちなみに『ライ麦畑でつかまえて』は、村上春樹訳で 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』として2003年に白水社から刊行されてます。

キャッチャー・イン・ザ・ライ

キャッチャー・イン・ザ・ライ

だいぶ文字を使っちゃったのであらすじだけを少し・・・


今回は原発テロ事件と酷似する小説を執筆していた作家<当麻蔵人>を良化委員会から警護し、言論の自由、表現の自由を守るという内容。最終的には海外亡命をするため逃走劇を繰り広げるという壮大なスケールだ。
当麻を保護する図書隊基地へメディア良化機関の襲撃が激化、移動中のヘリは追撃され負傷者を伴う事件に。マスメディア・・・取り分けTV局の取材は、どの局も24時間の報道停止制裁を法務省から受けながらも、各局でリレーしながら現状を伝えていく。
それでも世間が見守る中、表現の自由を左右する裁判の結果は、事実上敗訴となってしまった。
敗訴と同時に最終手段である亡命を選ぶ手筈になっていた図書隊と当麻は、国際図書館連盟(IFLA)の協力ですでに名乗りを上げている主要国へと疾走することになる。
法務省メディア良化委員会の目を掻い潜っての逃走だ。
執拗な良化委員会の襲撃で図書隊チームは分断、豪雨の中、当麻と警護する郁と堂上は都内を奔走する。その刹那、堂上が狙撃され負傷、一縷の望みを懸けて郁と当麻は大阪への脱出を試みる・・・

最終話にしてものすごい疾走感だ。
24時間の放送停止処分をものともせず、次々と連携して同じ内容のニュースを繋げるという描写に熱い思いを感じてしまう。逃走中に出会う心優しい人々との出会いも秀逸だ。逃走の手助けをするためにトラックで突っ込んでくれた運転手、逃走中快く受け入れてくれたホテルの従業員、変装を手伝う大阪のおばちゃんたち・・・

もちろんラブストーリー的にも甘い結末が待っているわけだけど、それは読んだ人のお楽しみかな(笑)

全体を通してみると、基本構造は<図書隊が善><良化委員会が悪>という対立をだしてわかりやすくしている。
読んだ人にはわかるけど、良化委員会側の意見は一切描かれず実は不明瞭なのだ。

ワタシ的には良化委員会というのはもう一人の自分ではないかと思っている。
不要な発言を繰り返し失敗して政治家たちは失脚していくけれど、それは言葉の持つ世間への影響力を軽く見た結果であろう。著者も自主規制という枠組みのなかで様々な試行錯誤を経て出版に至った経緯をあとがきに添えている。そういう自主規制の心・・・相手を慮ることは大切であり、言論の自由をかざして何でもかんでもありではおかしいし、それを自分で精査することは必要だ。つまりは図書隊と良化委員会の対立は、自分の心の中で起きる葛藤だと思ったのだ。どちらも正義であり偽善にもなり得る危うい関係が、図書隊であり良化委員会であろう。

難しく考えちゃってるけど、この物語は『ライトノベル』という軽いタッチで描かれた娯楽小説だから、こんなに仰々しく構えなくても面白く読むことができると思う。っていうかむしろ赤面するほどの恋愛描写に悶絶するような内容でもあるのだ。何せ『王子様・・・』とか言っちゃってるくらいだしね。

でわでわ、本のキャッチなら・・・

覚悟を決めて、走り続ける。

読了後、温かい気持ちに浸れるすばらしいシリーズです。お勧めなのです。

図書館革命 シリーズ④

図書館革命シリーズ④
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2011.07.17 / Top↑
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