小説レビュー その他もろもろとか。

先月に全巻揃ってたんだけど、読んだのは最近。
ちょっと読む機会を逃していまして、このベタベタに身悶えするほどの甘い物語はそれなりに気分が乗ってないと読めないんですよねー(笑)
実際には甘い恋物語もだけど、ちゃんとした表現の自由について著者の葛藤なども含まれていて、ただの『ラノベ』じゃない『大人のラノベ』を疾走中の図書館戦争シリーズ、今回はシリーズ③の『危機』なのです。




人気役者<香坂大地>の特集本に掲載予定のインタビュー記事・・・
実家が営んでいた家業の表記についてインタビューでは『床屋』で会話をしていたのに、いざ出版する段階で『理髪店』と文言が変更されようとしている。
この事態に香坂さんからストップがかかってしまった。

『<床屋>はね、今年七十五歳のおじいちゃんが六十年以上も続けてきた大切な仕事なんだよ!<床屋>という職業に誇りを持っているんだ。『床屋のじいちゃん』として今まで頑張ってきたうちのジジィがこの本を読んだときに<理髪店>なんて書かれてたらなんて説明するんだ!<床屋>は違反語だから別の言葉に置き換えましたとでも言えっていうのかよ!』

『そもそも違反語なんて決めた奴は誰なんだよ!うちのジジィに断りもなく<床屋>は違反語ですなんて・・・』

折口は臍を噛む・・・この校閲を通したのは他ならぬ私だ。自分自身もこのねじれを忘れ、メディア良化法に取り込まれているのだ。それでも社としての都合を説明しなくてはならない。

『現実問題として<床屋>はメディア良化委員会の違反語に入ってしまいます。良化委員会とことごとく対立する我々に対し、見せしめの如く検閲が厳しいのは避けられません。このままですと、広くファンにお届けするという当初の目標が達成できなくなってしまいます。』

『それでもこれだけは譲れないんだ・・・楽しみにしているんです・・・じいちゃんが。』

どちらかが引くか、妥協点を探すか・・・
その秘策は図書隊の玄田隊長から授けられた。

そうして打ち合わせの日、折口は玄田からの助言から突飛もない提案をあげることになった。


『香坂さんに訴えてもらいましょう!インタビューを望まない形に改竄された・・・本来使用した表現の<床屋>に戻して欲しいという訴訟です!』

『もちろんわが社も受けてたちます。<床屋>はメディア良化委員会の定めた違反語なので、校閲で推奨語に置き換えたのは正当防衛です。そうしたらこの話題をマスコミに食わせることで一般大衆を巻き込む社会問題として問題提起できるじゃないですか!』

『そうです!違反語を含む出版を認めさせることが大前提での訴訟なんです!』





恋愛初心者のイライラする甘い物語(笑)はさておき、ちょっと真面目な部分を取り上げてみたり。

びっくりしたことに、<床屋>は軽度ではあるけれど放送禁止用語なんですねー。
著者有川さん自身もこの問題はかなり突っ込んで闘った歴史があり、そんなことが『あとがき』や『児玉清さんとの対談』で書かれてました。
つまりは禁止用語というのは概ね自主規制であって、読者から苦情がきたら困るからという理由で先回りして摘んでしまった言葉であると。そうして累積した言葉はいつしか禁止用語へと確立してしまう・・・誰から何を言われた訳ではないのに、自主規制した事実が根拠となって定着してしまうという慣習に、現場の人たちも苦悩しているという実に深い問題のよーなのだ。
もちろん自粛する側や規制する側も、相手が傷ついてしまうのではないかという優しい慮った善意があって一概にどちらがどうという、○か×かがはっきりできないから性質が悪い。

でも内部にいる人ってやっぱり頭でっかちなんじゃないかな?

例えば『障害者』の<害>がよくないから『障がい者』とかどうなの?
そんなこと言い出したら<障>だって気に障るとかいうよくない言葉じゃない?
前後の文脈とかの流れで上手に判断することができないのかなー。ある程度の規制や決まりは必要だけど、うっかりすると文化の衰退に繋がる恐れだってあるんじゃないかな?現代用語のギャル語なんかよっぽど校閲対象なんじゃないのかなー。

おぉっ真面目だ(笑)

ちなみに、郁と堂上教官のぐずぐずした恋愛はいよいよ後半戦!堂上教官が憧れの王子様と知ってしまった郁の、ぎこちなさ全開の愛情表現は、もう本を正視できないほど赤面する描写の連続だ。
どー考えてもハッピーエンドしか考えられないけど、それに向かっていくまでに読んでるこっちの心臓が止まりそうだ(笑)ピュアすぎる中高生ばりの恋愛なので、読む人はそーとーの覚悟が必要!でもここまで読み進めてきた人なら慣れっこだし、それが好きで読んでるんだもんねー。

カミツレの想いを胸に、言葉を守り抜く。

今回はこんなんでどーでしょう。
カミツレ(カモミール)の徽章は、図書隊創設の歴史が詰まっているんだ。

ちなみに本物は、

それでも、これだけは譲れない。

うーんかっこいいなぁ。

図書館危機 シリーズ③

図書館危機 シリーズ③
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2011.07.15 / Top↑
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