小説レビュー その他もろもろとか。

この作品、目次が多くてびっくりする(笑)
なんと60も目次があるのだ・
・・5ページから10ページごとに挟んでくるので、読み始めのころは読むスピードを削がれる感じで<何の意味があるんだろう>とか別の次元で気になっていた。
読み終わってもこの多大な目次の意味は思いつかない。
目次は内容を補うワードとして普通に成り立っているけど、それ以上の意味があるに違いないと踏んでいるワタシがいる・・・。

まーともあれ何とか読み終えることはできた。そして疲れた。物語の深みに嵌らないよう何故か注意していたからかも知れない・・・登場する人物は微妙に、どこか普通ではない狂気の一面を持っているようで、そこはかとない怖さを感じ取ってしまったからだ。
弟も兄も父も・・・とても頭の良い人たちが感じる世界は容易に踏み込んではいけない領域のように感じ、気付かぬうちに精神的防衛線を張っていたのだろうと自己分析してみる。著者の意図するところとは別の部分を変に解釈してしまったのかも知れないな。
・・・登場人物の人間的感情が極力排除されたシュールな内容は現実的ではないのかもしれない。けれどもこの物語は、ミステリーでありながらも家族愛や兄弟愛を深く追求した作品で、血の繋がりという遺伝子と、精神的心の繋がりを眩しいくらいに魅せつけている・・・著者の筆力の極みを感じたからこそ、深読みしすぎているワタシは怖いのかもしれない。




「正解なんてないんだろうな」

という父の台詞を思い出していた。

俳優アルパチーノは<私はいつでもどちらの道を選ぶべきか判断できた。けれどそれを選ばなかったのは、困難だったからだ>と云った。
芸術家の岡本太郎は<私は人生の岐路に立ったとき、いつも困難なほうの道を選んできた>と云った。

春を産むべきかどうか悩んだときの父の選択は、私は正解だと迷うことなく頷くだろう。
それでも自分の母親が見ず知らずの少年にレイプされた事を問われたならば、首を横に振ってしまう。

<仮に、将来の妻が同じ目に遭ったとして、おまえはその子供を産ませるのか>

と問われれば、たぶん産ませないと答えてしまう。産まないほうが幸せだからだと内心で返事をするのだ。

<おまえの父は間違っていたのか>

<おまえの弟は誤りなのか不幸なのか>

<それはどういうことなのか、矛盾じゃないのか>


としつこく問われれば、

「知るか!矛盾で悪いか!」

と激昂するのだろう。
神は一人一人の内にいる・・・とガンジーは云った。
兄貴は考えすぎだね・・・と、春の笑顔が弱々しく浮かんでいる・・・




放火事件を巡って、主人公である兄の<泉水>と弟の<春>が犯人探しをしながら心を通わせる物語。
兄弟の父親は異なり、春の父親はどこぞの婦女暴行犯だ。遺伝子の繋がりだけが兄弟や親子の繋がりではないと、春は静かに憎悪を抱きながら暮らしてきた。それは父親も感ずる思いであり、泉水もまた傷ついていた。その感情の糸は、物語の中で遺伝子工学では交わることのないDNA配列などものともせず繋がっていることを証明する。

遺伝子の難しい内容を使っての謎解きは少々難しく、ある種のこじ付けすら感じさせる。まーその部分すらも伏線であったりするんだけれど、小説の核心をずっと隠しながら最後までひけらかすことなく本を綴じる手法は圧巻だ。オブラートに包んだままの小説の核心は、各自で感じるままでしかないのだ。

ところどころ<考えすぎてはいけない>というフレーズがでてくる。
ここまで深く悩ませておいて<考えるな!感じろ!>というのはヒドイ話だけど(笑)緻密に計算された著者の文章にどんどん深みに嵌ってしまうワタシはドロ沼だ。そして嵌るほど、奇異な人生に身を投じた主人公たちが怖くなるのでもある。父親が想う血の繋がらぬ兄弟への愛情、そして重なることのない遺伝子の二重螺旋も意味を成さない兄弟の繋がり・・・それはワタシにとって深い愛情に感じられる反面独特の怖さが伴っている。崇高すぎるのかも知れない。
<春が二階から落ちてきた>という冒頭の一文は、巻末の最終行にもう一度繰り返される。
最初に読んだ印象と、最後に読む印象はまるで違う。最後にもう一度振り返ったときに、この一文は何度もリフレインして心を揺さぶってくる。幾重もの意味を成しているのだ。
恐ろしいまでの著者の筆力に、重い題材であったにもかかわらず、読後感は疲れていながらも夢の中で浮いているような悪いものではなかった。本当不思議な作家さんだとワタシは興味深々で、もう次の積読本<アヒルと鴨のコインロッカー>を用意しているほどなのだ。

本のキャッチは難しいなー・・

俺たち兄弟は最強だ。

本文からの引用ですが、そーゆうことなんだ!という、強い本の意志も伝わると思います。

重力ピエロ

重力ピエロ
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2011.07.02 / Top↑
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