小説レビュー その他もろもろとか。

前回読んだ私的短編集「てのひらの迷路」で出会った石田さんですが、今度は長編を手にとってみました。ここまで来て、未だ「池袋ウエストパーク」は外してるのですが(笑)この「うつくしい子ども」は池袋~のあとに手掛けた石田さん初めての長編小説だそうですよ。



何だろう・・・とてもやり切れない思いに胸が痛む。
13歳の少年犯罪が主題である。子どもの犯罪は、いつの時代でもタブーだ。少年法という法律が付き纏う限り大人たちは冷静な判断ができず、やりどころのない憤りだけを抱えて

「どーせこんなの少年法を逆手に取った確信犯だろ」

などと批判的な立場で物事を解釈しようと躍起になることで、心の平衡を保とうとしたりする。
いままで子どもの立場を利用した悪質犯罪というレッテルを、ワタシも信じて疑わなかった。犯罪に手を染める子どものことを子ども扱いしていたのだ。

それだけに今回深く考えさせられた。孤独には、子供も大人も、変わりがないのである。




『夜の王子様』
・・・それが松浦くんの書いた「星の王子様」を読んだ感想文だ。松浦くんの感想文は、原作から感じた心を別の形で創作した短編小説として書かれていた。

夜の王子は、乗っていた宇宙船の故障で「死の星」に不時着する。その星は、核戦争により地表が溶け、ツルツルでガラス状の平原が広がる死の星だった。王子は宇宙船の救命ポットによる生命維持装置で生活を始めた。
春が来て、夏が来て、秋が来て、冬が来る。
一年が経ったある日、夜の王子はガラスの星の一年をすべて見尽くしたと思った。
家族も、友達も、動物や植物すらも、ガラスの星にはなにもない。自分の命が一粒この大きな星にあるだけだ。
その夜、王子は決心する。・・・そしてそのときはやってきた。
夜空の彼方に別の宇宙船の灯りを見つけた王子は、ガラスの地表にメッセージを彫った。そしてためらうことなく救命ポットの燃料をかぶり、自分自身に火をつけた。それは自分自身の存在を認めてもらう命懸けの救難信号だ。
しかしその悲痛な叫びは、はるか彼方を飛び過ぎる宇宙船には届かなかった。豪華な客船の誰ひとり、王子の命の灯火に気付かなかったのだ。
ガラスの平原には一握りの灰とメッセージだけが残されている。<夜の王子はここにいた> と。


物語はそこで終わっていた。
初めて松浦くんのことがわかった気がした。
ぼくはこの星でただひとり、松浦くんの命の火に気が付いてしまったのだ。

松浦くんを助けたい。
ぼくにできることは、その火を消して彼を救うか、一緒に燃え尽きるしかない・・・




核心はここに集約されていると思う。
孤独とは、子供も大人も、果てには老人ですらも闘わなければならない恐怖であると感じるからだ。

この小説は、主人公三村幹生の弟カズシ(13歳)が、児童殺害の罪を犯す。その真意を幹生が調べ、紐解きながら、心の闇に辿り着くまでを主題としている。13歳の少年が児童虐殺というと、社会現象となり世の中を恐怖の戦慄に陥れた「酒鬼薔薇事件」を思い出す人がほとんどであろう。当然この小説もこの事件を意識して描かれている。著者なりの事件解釈として執筆した現代社会に向ける警鐘であろう。

神戸連続児童殺傷事件

幹生からの視線と、ジャーナリストの山崎が事件を追う視線と、交互に語られる「三人称多視点」を駆使して事件は核心に迫っていく。被害者家族と、被疑者家族の問題は、多くの作家さんも手掛けてきた難しく社会性を問われる問題だ。この作品も被疑者家族として世間からの激しいバッシングに晒される様子が描写されている。この醜い状況を、被疑者家族である幹生とジャーナリストである山崎とが、情に流されることなく語っていく。少年法に守られて、殺人を犯しても二年と経たず社会復帰する現行法に加担することなく真摯に描かれたストーリーは、著者の少年犯罪における誠実な態度であり、真剣に取り組んでいることを伺わせる。ただ、どちらにしてもやりきれない思いだけは募ってしまう。

犯罪の根底は孤独だ。心の孤独感はなかなか理解されることがない。孤独とは人間にとって、いつも隠れていながら常に付き纏う影であり、生涯を共にしなければならない厄介なものだ。本日の月食であるかの如く、太陽の下では普通に見えていても、月の侵食は常に進んでいる。見えたときにはすでに侵されている。そう、それが孤独なのだ。

絶望感漂う小説のような感想の羅列であるが、決して希望がないわけではない。
作品の最後は僅かながらの希望の火を灯して閉じられている。読後感としては、心に霞がかかったようであり晴れやかではないものの、決して悪くはない作品と思える。

本の帯ならば、

早くみつけて。ぼくはここにいるから。

人それぞれ、孤独のサインを常に発信し続けているのかもしれない。

うつくしい子ども

うつくしい子ども
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2011.06.16 / Top↑
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