小説レビュー その他もろもろとか。

2013年4月の読書メーター
読んだ本の数:5冊
読んだページ数:1605ページ
ナイス数:246ナイス

光媒の花 (集英社文庫)光媒の花 (集英社文庫)感想
六篇からなる連作短篇集。どのお話も山本周五郎賞作品だけあって、人間の影の部分にそっと光をあてるような、蝋燭の灯りで照らした陰影を感じるような雰囲気に包まれている。お気に入りは五章・・・年月が経つことで人は変わる、変わることができるという思わぬ勘違いが、結末につれ優しさを伴った感情いっぱいに広がりをみせてくれる作品。最後六章で一章に繋がる伏線を描き見事なループを完成させるのだが、欲をいえば語らない美学があっても良いのではないかと。あからさまな伏線でなくとも読者は気付くはずであり丁寧な回収はある意味勿体無い。
読了日:4月19日 著者:道尾 秀介
横道世之介 (文春文庫)横道世之介 (文春文庫)感想
人の出会いは偶然ではない。生涯出会うことのない人が無限にいる中で接点を持つことがあるならば、それは必然だろう。誰しも生きてゆく中、過去の思い出になろうとも必ず温かい記憶を持っている。世之介の生き様は決して誇れるものではなく、どちらかといえば堕落した大学生のそれに間違いない。それでも、田舎者で朴訥純粋を絵に描いたような真っすぐは、出会う人に笑顔の欠片を残してゆく。世之介とは青春の幻影であって、こんな生き方ができたらという憧れなのであろう。『大丈夫、助けられる』しか考えが及ばない・・・そんな世之介が愛おしい。
読了日:4月12日 著者:吉田 修一
のぼうの城 下 (小学館文庫)のぼうの城 下 (小学館文庫)感想
それぞれの戦いに漢を感じてしまう。丹波然り、三成然り。ただ結局のところ愛すべき人であるのぼう様の魅力は底知れぬ力を秘めていて、最終的には死闘を繰り広げる三成までもを虜にしてしまうのだ。そんなのぼう様ではあるがこの結果も決して望んだ姿ではないのだろう・・・『今と同じように皆暮らす』という想いが、読後重く圧し掛かってくる。戦国の世でそれは難儀なことであっただろうが、人を愛して慈悲を持ち、助け合いながら生きてゆくのぼう様が今の時代に生まれていれば、現代の世ももう少し明るくなっているだろうにと想わずにいられない。
読了日:4月6日 著者:和田 竜
のぼうの城 上 (小学館文庫)のぼうの城 上 (小学館文庫)感想
石田三成軍勢二万に対し僅か五百足らず・・・殿のご乱心ではないが、常人であればもはや到底敵わぬ相手を敵に回してしまう<のぼう様>こと成田長親。上巻の山場である決意表明に身震いした読者も多かろう。のぼう様の真意は測りかねるが、この無謀とも思える戦に『誇り高い』というプライドだけではなく『嫌なものは嫌だ』という純粋な価値観を全うする強い光をも感じてしまうのだ。社会で生活するに連れ覚えてしまった妥協という処世術に甘んじている自分を恥じるとともに、独特の爽快感と期待にワクワクしながら息つく間もなく下巻へと傾れこむ。
読了日:4月5日 著者:和田 竜
和菓子のアン (光文社文庫)和菓子のアン (光文社文庫)感想
和菓子を通して人生劇場をほのぼのと描く物語。初めてのアルバイト経験やデパ地下での<あるある描写>などモラトリアムの追体験は、日々ギスギスした毎日を送るワタシとしては懐かしく、またこそばゆくも感じてしまう。それにしても和菓子に秘められた物語の数々はなんとロマンチックなことだろうか・・・季節により呼び名が変化する『ぼた餅』など定番である和菓子の『粋』な計らいに、日本人に生まれて本当に良かったとしみじみ感じ入る。四季折々にあつらえた和菓子の魅力に読者はみな感化され、和菓子屋を今そっと覗き込んではいないだろうか。
読了日:4月1日 著者:坂木 司

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