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8月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:2097ページ
ナイス数:266ナイス

ゴーマニズム宣言SPECIAL天皇論ゴーマニズム宣言SPECIAL天皇論
『日本の象徴』というその本質を理解している日本人はどれくらいいるのだろうか?普段の生活において考える機会はあまりにも少なく、殆んどの人が『わからないけどエライ人』という認識であろう。今回一読しただけだが、時代と共に変化してきた皇室であってもその根幹は変わらないということに気付くことができた。国民のために祈り続けるという存在・・・たとえ悪しき卑しき心根の日本人であっても訳隔てなく天皇は祈るのである。天皇に一切の自由はない・・・祈るだけの存在として一君万民の思想があり、私たちはその祈りに常に守られているのだ。
読了日:08月28日 著者:小林 よしのり
往復書簡 (幻冬舎文庫)往復書簡 (幻冬舎文庫)
相手を想う気持ちの強さが手紙という時間の魔法により深く心に染みいる。三つの短篇とオマケを含む作品の中ではやはり『二十年目の宿題』が群を抜いて印象的だ。恩師からの手紙はお願いであり、過去に起こった不幸な事故の告白であり懺悔でもあり・・・奔走した末に辿り着く真実と綴られない真実と、あからさまな嘘ではなくモノローグは手紙に記さないことでゆっくりと昇華に導かれてゆく。人間の隠したい真実のベールをことごとく剥がして曝けだす著者独特の筆致は、並び替えの妙を得て読者を温かい世界へいざなうが、それでも湊かなえは毒々しい。
読了日:08月24日 著者:湊 かなえ
訪問者 (祥伝社文庫)訪問者 (祥伝社文庫)
小劇場で演劇を観ている雰囲気。各幕の『訪問者』によって予想だにしない展開が繰り広げられ、密室の恐怖感をじわじわと感じさせる。みな役者であり演者として嘘と真実を織り交ぜ、本当の訪問者とは誰なのか?と、めくる頁が止まらなくなる。後半伏線を次々回収して解決に導くも、思わせぶりな表現・描写により霧が晴れぬまま真実は闇に葬る終幕・・・果たして自分の意志なのか?招かれたのか?劇場の幕が下りた瞬間から『操作されていたのでは?』という疑心暗鬼で心が埋め尽くされる。本当のサスペンスとは読者の心に植えつける妄想の火種なのだ。
読了日:08月20日 著者:恩田 陸
ヘヴン (講談社文庫)ヘヴン (講談社文庫)
壊れてしまいそうなギリギリの世界に身を委ねる中学生たちの、リアルとは掛け離れた美しく飾られた芸術を見せられているように感じる。何故ならいじめを受け入れる意志など到底ありえないからだ。いじめの恐怖とは、いじめを親に知られてしまうことであって、そこに何の理念も存在しない。百瀬といういじめる側の達観視した論説に読者は翻弄されるかもしれないが、これもリアルではない。作品の扱うテーマがいじめであるだけに過敏に反応してしまうが、小説の視点でみれば美しい世界観と哲学的な筆致にキラキラとした幻想を魅せる秀作に間違いない。
読了日:08月15日 著者:川上 未映子
星々の舟 Voyage Through Stars (文春文庫)星々の舟 Voyage Through Stars (文春文庫)
『名の木散る』の鮮烈なる戦地の描写に臓腑を抉られるが主題は家族それぞれの<生きる>であり、人間の業の深さに焦点を当てた六篇の連作短篇はその絆の歴史である。自分の居場所を見つけることは生きてゆくための性であり、どんなに歪であっても人それぞれに幸せの形があるのだろう。生きることが下手であれ、それでもひっそりと懸命に輝いている姿は空に瞬く星空のようであり美しく切なさを感じる。『幸福とは呼べぬ幸せも、あるかもしれない』という哀切漂う一行は、著者が捜し求める<自由>の形であり、家族を乗せた舟は星空を進んでゆくのだ。
読了日:08月09日 著者:村山 由佳
贖罪 (双葉文庫)贖罪 (双葉文庫)
『告白』の湊かなえ・・・と紹介される著者だけに、本作は二番煎じと捉える読者が多いのではないか。鍵を握る4人の独白で事件の概要から核心に迫り、5人目の独白で伏線を回収する構成は残念ながらインパクトに欠ける。勿論この本を最初に手にした読者なら相応の衝撃を受けるだろうが、悪意に満ち満ちた『告白』には及ばない。この著者の作品に善人など一人もいらないのだ。鋭利な刃物で人の善意を切り刻み、暗い奈落へ突き落とすような救いのない物語でないと。『贖罪』というタイトルが秀逸なだけにキモになる償いが中途半端に終わり本当に残念。
読了日:08月08日 著者:湊 かなえ

2012年8月の読書メーターまとめ詳細
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2012.09.04 / Top↑