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1月の読書メーター
読んだ本の数:3冊
読んだページ数:1656ページ
ナイス数:303ナイス

ロードムービー (講談社文庫)ロードムービー (講談社文庫)
五篇の短篇集。表題作『ロードムービー』で、著者が導く低い目線から繰り出す不安いっぱいの情景は、精一杯という描写が痛痒くどこか懐かしさも感じ切なくなる。あっと驚く仕掛けはオマケでしかなく、主人公トシの一生懸命な時間と道のりが次々と映像化して飛び込んでくる。もはやそれだけで充分優しい気持ちに満たされるだろう。そぼ降る雨の改札前、想像だけで語るトーキョーの姿、そして雪の映像とその先に待ち受ける懐かしい校舎へと続く道・・・どれもが美しくも狂おしい心の中を描写する。その時々の思いは読者の琴線を刺激して止まないのだ。
読了日:01月24日 著者:辻村 深月
ゴールデンスランバー (新潮文庫)ゴールデンスランバー (新潮文庫)
最初に結末を語る倒叙法が物語の印象をより深い味わいに導いてくれている。物語はケネディ大統領暗殺事件をモチーフとして、個が公に操られる現代の闇に向けた警鐘を鳴らす。ただ、明るい未来こそ照らさないが人との繋がりを何か感じさせる温かさに読者は何度も救われる。逃げ惑う主人公青柳が思い出の不法投棄車両に残す『俺は犯人じゃない』という渾身のメッセージに、かつての恋人樋口が付け足すメッセージに涙が止まらない。真実という根源に迫り人間を信頼する危うさと儚さが描写された本作には『たいへんよくできました』の判子がよく似合う。
読了日:01月11日 著者:伊坂 幸太郎
カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫)カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫)
何となく子供騙し的雰囲気。決して悪い意味でなく、宗田理さんの『ぼくらの七日間戦争』のような<大掛かりな子供の悪戯>を思い出してしまった。幾重にも騙す著者の手法は、作中の言葉を借りれば理想のマジックであり、騙される喜びを読者に与える術である。人生を賭してまで過去の清算に拘るかは別として、計算高い著者が考える詐欺の手口にまんまと嵌っていく過程や、繰り返されるどんでん返しに対し、抗うことなく読者は素直に踊らされるべきではないか。すると『きっとまだ間に合う』という言葉に、読者の心は自然と温かくなれるはずだからだ。
読了日:01月04日 著者:道尾 秀介

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