小説レビュー その他もろもろとか。

今でこそ一流作家の一人として活躍してるけど、この作品はまだデビュー間もない江國さんの短編集なのだ。

「間宮兄弟」以来、久々に江國作品に触れることになった。
まぁ当然のことながら「冷静と情熱のあいだ」は何度も読み返す名作で、DVDも買ったくらい(笑)
短編だとよりいっそうサラっとしているというか、淡々と話が進みそれでいて心に残していくという独特の感覚がすでに「大人」を感じさせずにはいられない。

一番冒頭の「デューク」はセンター試験で全文掲載、受験者が次々と号泣し試験に支障をきたしたという曰くつきの作品。少し抜粋すると、

歩きながら、私は涙がとまらなかった。

  中略

デュークが死んだ。
私のデュークが死んでしまった。
私は悲しみでいっぱいだった。

  中略

泣けて、泣けて、泣きながら駅まで歩き、泣きながら改札口をとおり、泣きながらホームに立って、泣きながら電車に乗った。


愛犬が亡くなったという導入部・・動物を飼ったことがある人は、この悲しみが痛いほどよくわかるだろう・・・こんな文章が試験で出されたらたまらない!感情が入らないわけがない!そりゃ試験どころじゃないだろう。

その他二十編、全二十一編収録のこの小説の初版は1996年、14年前である。

不思議な、時空を超えた感覚に陥りながらも、どこか温かい気持ちにさせる、珠玉の短編が紡ぎだす幻想の世界は、久々に江國ワールドを堪能するよい"マジックアワー"になった。
間宮兄弟冷静と情熱のあいだ<Rosso>冷静と情熱のあいだ<Blu>つめたいよるに
間宮兄弟 冷静と情熱のあいだ<Rosso> 冷静と情熱のあいだ<Blu> つめたいよるに



2010.10.22 / Top↑
チリ落盤事故・・全員救出され本当よかった。

外界と閉ざされた17日間、助かる見込みが分からずとも「生きよう」とする33人の強い意思がひとつになり、ここまで生き残ったのだと確信した。
リーダーの強い意志により、一番最後に地上に上がるというその責任感には、本当感動しきりなのだ。

今のところPTSD(心的外傷)のケアが半年以上施されるということ・・・でも、この強い結束力で困難に打ち勝った精神力も同時に養ったわけなので、きっと克服してくれるものと信じたい。

本日はこの奇跡の瞬間を生放送で見られたため、ラッキーだった。
リーダー救出後に大統領と共に歌う国歌斉唱(自然と歌いだした)が実に格好よく、

「君が代」

じゃこうはいかないなぁ・・・とうっかり比べるワタシだった(笑)
コピアポ鉱山落盤事故(チリ鉱山落盤事故)ウィキペディア
チリ落盤事故救出劇
2010.10.14 / Top↑
さらっと流しちゃったんで、少しだけ詳しく紹介しよー。
やっぱり重い話だけどこれは大切な問題だと思ってるんだ。


今回は実に悲しい展開を含んでいる。
重要な登場人物の悲しい結末があり、シリーズを通して読んでいる人には結構ショックな展開なのだ。

まず、赤い眼の男と直接対決の見所があるけれど、またそれがその後の展開を左右するキーワードとなったりして、ハードカバーでは⑧巻まで刊行されているのでちょっと気になるんだけど・・・文庫化まで持とう(笑)
今回は、医療従事者の良心に悲しさを含みやり切れない想いがすべてを支配しそうになる。
臓器を移植すると助かる人がいる。臓器を提供すると死んでしまう。両方の思いを八雲は天秤にかけることができるのか。人間の弱い心を狙って赤い眼の男は執拗に八雲を脅かすのだ。
ライトノベルという枠組みからは考えられないテーマで話は進行するが、八雲以外の脇役の辿ってきた人生も含め物語は新たな局面に向かっているように思う。


臓器移植コーディネーターという方がいらっしゃいまして、現在この仕事を請け負う人数が足りないというニュースを見た。
そのドキュメンタリーでは、医師とその脳死の患者さん家族との間に入って、円滑に作業を進めるという身に詰まされる仕事内容がクローズアップされていて、コーディネーター自身も精神的に病んでしまうことがあったり・・・
生と死の問題はどこか強い心がないとやり切れない難しい問題であると痛感。番組を見ただけでも心が揺れるのに当事者の気持ちは計り知れない。

脳死状態であっても、その人の手はたった今も温かいのだ。臓器を移植するということは、そこでその人の命が消えることを意味する。
その手術を担当する医師は、自らの手でその温かい手を持った人の生命維持装置スイッチを切る・・・自分の手で命を消す作業を行なうのだ。

それはもはや神の領域といってもおかしくない。

でも、この様々な人々の力によってもうひとつの命の灯が消えずに済む・・・この心の葛藤は並々ならぬもので想像を絶する。正直そうなりたくないし、巻き込まれたくない。


社会的に取り上げようと思ったのか、今回の作品は実に考えさせられる内容であった。

っていってもいつものドタバタ劇シーンは健在なので安心して読んでね。

転んだ。 とか。
 
臓器移植コーディネーターが足りない(産経ニュースより)
2010.10.04 / Top↑