小説レビュー その他もろもろとか。

2014年12月の読書メーター
読んだ本の数:2冊
読んだページ数:629ページ
ナイス数:121ナイス

Nのために (双葉文庫)Nのために (双葉文庫)感想
確かめることのない無償の情愛を静かに棚引かせる物語。狂おしいほどのすれ違いは背負ってきた過去の重さに比例するのだろうか・・・それぞれが心の奥底にひた隠す愛の証拠が読む者を刹那に貶める。希美の愛も、西崎の愛も、それは献身という名の贖罪であろう。自らを投げ出すことで守り抜くものとはかけがえのない人との繋がりであり、仮にそれが歪んだピースの掛け違いであっても黙することでその罪は永遠に昇華されるのだ。人は脆い。それ故生きてゆくのが辛いこともある。それでも前を向けるのは、知る由もない想いがそっと寄り添うからだろう。
読了日:12月31日 著者:湊かなえ


書店ガール 3 (PHP文芸文庫)書店ガール 3 (PHP文芸文庫)感想
働く書店員の群像がちょっぴり痛痒くこそばゆい物語。働く女子・・・愛奈の真っ直ぐな勢いや亜紀が抱えるワーキングマザーとしての在り方、理子が悩む女性管理職としての心境、そして今回のメインテーマでもあろう震災に対する東京人としての思う内面が希望を込めて描かれている。大切な人を失う、土地を奪われるなどの重い経験はなくとも、長蛇の列をなしたガソリンスタンド、品薄のスーパー・コンビニ、なにより街の灯りが消えた蒼い星空は皆の共通の記憶に違いない。いつの日か安心して忘れることができるまで、書店は時代を映し続けてゆくのだ。
読了日:12月23日 著者:碧野圭

読書メーター
2015.01.04 / Top↑
2014年11月の読書メーター
読んだ本の数:2冊
読んだページ数:404ページ
ナイス数:94ナイス

誰かが足りない (双葉文庫)誰かが足りない (双葉文庫)感想
『足りない』をキーワードに、生きることが下手な人たちの心に患う六つのエピソードを一人称で語ってゆく物語。歳を重ねるに連れて心の奥底に溜まった澱は、度々人生を濁らせてしまうもの。決して人には語らぬが、読み人それぞれが経験した人生の岐路での出来事をそっと想い、キュンと胸が締め付けられたに違いない。人は生きてゆく。それでも生きてゆくと決める心を美味しい想い出が後押しする。辛い記憶も哀しい記憶も、美味しい記憶によってすべてが幸せに導かれてゆく。コンソメスープという澄みきったボウルの向こうに集う『ハライ』に幸あれ。
読了日:11月16日 著者:宮下奈都


伝え方が9割伝え方が9割感想
人に物事を伝える方法論を丁寧に説明する指南書。だいたいが『そんなこと全部実行してるよ』という理論ばかりだったけれど、それはあくまでも感覚的なものだったので、文章にしてまとめることでさらに消化が進んだり理解が深まるものなのだなあと納得。内容は本当に伝えることが不得意な人向けと思われ、要点だけを抜き取ってしまえばものの15分くらいで読んでしまえるのだけれど、実際使ってみれば効果は絶大というものばかりで決して薄っぺらい内容というわけではない。例えば『いい天気』よりも『あ、いい天気』とするだけで心に残るのだから。
読了日:11月9日 著者:佐々木圭一

読書メーター
2014.12.03 / Top↑
2014年10月の読書メーター
読んだ本の数:2冊
読んだページ数:761ページ
ナイス数:140ナイス

本日は大安なり (角川文庫)本日は大安なり (角川文庫)感想
結婚式というハレの舞台にそれぞれの思惑が絡み合うという差し詰め4組のマリアージュ。物語はウエディングプランナーの矜持もしっかりと描かれていて、心にするすると入り込んでは琴線を刺激してくる。たった一日のために注ぎ込む想いとは、言い換えれば愛の重さに比例するのだろう。『見世物だ』『茶番だ』などと揶揄する声があろうとも、結婚式とはやっぱり大切な儀式なのだと改めて思わされてしまう。それにしても、わかりやすい伏線すらその収斂に導く辻村深月の筆致は実に巧みで、氏の描く人物は嫌な女ですら魅力的に輝きを放つ。勘弁してよ。
読了日:10月13日 著者:辻村深月


不機嫌な果実 (文春文庫)不機嫌な果実 (文春文庫)感想
満たされないオンナの達観が、滑稽なまでの生き様をさらけ出す物語。主人公麻也子が不倫に堕ちてゆく自分への言い訳が驚くほどご都合主義でゾクゾクする。『計算』という言葉がこれほどまでに淫靡に満ちた響きを奏でるのかと、麻也子の妄想はどこまでも果てることがないのだ。いつまでも美しくいるための恋は常備薬であるのだけれど、度を過ぎるとそれは麻薬と化して心を少しずつ浸食してゆく。あってはならぬ逢瀬を繰り返すごとに、艶やかになる女性の美しさは磨き抜かれたガラスのように輝くのだろう。冷たい笑顔だけを残して。悦びは堕落なのか。
読了日:10月12日 著者:林真理子

読書メーター
2014.11.04 / Top↑